治験とは
臨床試験は身近な食品からがんの新薬まで3056件が実施されている
臨床試験は、特定保健用食品や機能性表示食品といった食品や特定の成分の機能の確認から、病気に対する新しい治療の有効性や安全性を確認するために行われています。新しい薬や機能性を持つ食品がお店に並び販売されたり、薬が病院で処方されるまでには、多くの実験や試験が行われます。薬の元となる物質を、動物実験などを行い有効性や安全性を確認し、安全で有効なものと確認されたものに関して、ヒトに対しての有効性と安全性を調べるために行われるのが治験です。1997年~2017年10月10日までに、行われた臨床試験は3056件です。
医薬品や医療機器における「治験」とは、ヒトに使用しても安全であり治療効果が予測される薬(医療機器)の承認を国から得るために行われる試験です。
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・特定保健用食品(トクホ)
飲料などのパッケージに「コレステロールの吸収を抑える」などの表示を見たことがありませんか?これは特定保健用食品(トクホ)といい、血圧やコレステロールを正常に保つことをサポートする成分を含む食品のことで、特定の保健用途の表示が許可されています。表示されている効果や安全性については国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可しています。
特定保健用食品届け出数:1997年10月~2017年10月までで、1085件
(データ出典:消費者庁 特定保健用食品許可(承認)一覧) -
・栄養機能食品
ビタミンやミネラルなど栄養成分の補給のために利用される食品で、栄養成分の機能表示ができます。1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分が決められた範囲内で、注意喚起表示も義務づけられています。
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・機能性表示食品
事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものです。ただし、特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではありません。
機能性表示食品の届出件数:2015年4月~2017年8月までで、1126件
(データ出典:消費者庁 機能性表示食品の届出情報) -
・薬・医療機器・治療法
新薬や医療機器、治療法に関する治験は、新たに開発された薬のヒトに対する有効性や安全性を確認し、国から承認を得るために行われる試験です。医師や研究者によって開発された化合物(薬の元)をマウスなどの動物を用いた試験を行い、有効性と安全性を確認した上で、ヒトに対しての治験が行われます。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。「ヘルシンキ宣言」とは、ヒトを対象とする生物医学的研究に携わる医師のための勧告で、医学の進歩のためには人体実験が必要なことを認めた上で、被験者の利益は科学と社会への寄与よりも優先されるべきという原則を打ち出しています。また、治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。治験には3つの段階があり、第1段階として健康な成人を対象とした薬の安全性や吸収・排泄の確認を行い、第2段階は、少数の患者さんを対象として用法・用量の確認が行われます。第3段階では、多くの患者さんを対象として既存の薬や治療、偽薬(プラセボ)などとの比較する試験を行います。こうしたいくつもの段階を経て得られたデータを国が審査し薬は承認されています。
薬・医療機器・治療法の届け出数: 2000年~2016年度、12301件
※2000年~2001年は年単位での集計結果、2002年~2016年は年度単位での集計結果
(出典:医薬品医療機器総合機構 治験計画届出件数)
治験はだれでも受けられるの?
治験には、参加できる条件が定められています。健康上問題がない人が受けられる治験もありますが、特定の疾患の患者を対象に行われる治験もあります。
治験により参加条件が設けられているため、治験に参加する前に診察や検査を行い、結果によっては参加できないこともあります。
- 1型糖尿病
- 2型糖尿病
- 3型ヴォン・ヴィレブランド病
- 非3型ヴォン・ヴィレブランド病
- ADHD (注意欠陥・多動性障害)
- A型インフルエンザウイルス感染症
- B型インフルエンザウイルス感染症
- ディフィシル感染症
- クロストリジウム・ディフィシル感染症
- クロストリジウム・ディフィシル関連下痢症
- 慢性気管支炎
- 肺気腫
- C型肝炎
- 院内肺炎
- 敗血症
- HIV-1感染症
- HTLV-1関連脊髄症
- レノックス・ガストー症候群
- マントル細胞リンパ腫
- 超多剤耐性結核症
- びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫
- α1-アンチトリプシン欠乏症
- アスペルギルス症
- フサリウム症
- ムーコル症
- アデノシンデアミナーゼ欠損症
- アトピー性皮膚炎
- アルツハイマー型認知症
- アレルギー性結膜炎
- アレルギー性鼻炎
- イミペネム耐性菌感染症
- インフルエンザ
- うつ病
- がん悪液質
- がん疼痛
- クッシング症候群
- くも膜下出血
- グラム陰性菌性肺炎
- くる病
- 骨軟化症
- クローン病
- シェーグレン症候群
- そう痒症
- 多発性骨髄腫
- デュシェンヌ型筋ジストロフィー
- てんかん
- ドライアイ
- トランスサイレチン(TTR)型家族性ア ミロイドポリニューロパチー(FAP)
- トランスサイレチン型心アミロイドー シス
- ヌーナン症候群
- パーキ ンソン病
- 膣前がん病変
- 膣がん
- 子宮頸がん
- 子宮頸部前がん病変
- 外陰部がん
- 外陰部前がん病変
- 性器周辺部病変
- ファブリー病
- 腹膜がん
- ぶどう膜炎
- ミトコンドリア脳筋症
- メルケル細胞がん
- リン パ性白血病
- 悪性胸膜中皮腫
- 悪性黒色腫
- 悪性神経膠腫
- 悪性軟部腫瘍
- 胃がん
- 胃食道逆流症
- 胃食道接合部がん
- 胃腺がん
- 胃潰瘍
- 十二指腸潰瘍
- 吻合部潰瘍
- 非びらん性胃食道逆流症
- 逆流性食道炎
- ゾリンジャー・エリソン症候群
- 遺伝性血管性浮腫
- 遺伝性周期性発熱症候群
- 人工呼吸器装着院内肺炎
- 下肢痙縮
- 加齢黄斑変性症
- 花粉症
- 過活動膀胱
- 壊疽性膿皮症
- 活動性関節リウマチ患者
- 活動性潰瘍性大腸炎
- 褐色細胞腫のカテコールアミン過剰
- 乾癬
- 冠動脈疾患
- 血栓性
- 虚末梢血管疾患
- 末梢動脈疾患
- 汗腺炎
- 肝芽腫
- 肝硬変
- 肝細胞がん
- 間質性肺疾患
- 間質性膀胱炎
- 関節リウマチ
- 悪性リンパ腫
- 気管支拡張症
- 気管支喘息
- 急性移植片対宿主病
- 急性冠症侯群患者(ACS)
- 急性虚血性脳卒中
- 一過性脳虚血発作
- 急性心不全
- 急性静脈血栓塞栓症(VTE)
- 急性増悪
- 急性中耳炎
- 咽頭炎
- 喉頭炎
- 扁桃炎
- 筋炎
- 結節性硬化症に伴う皮膚病変
- 結腸がん
- 直腸がん
- 結膜炎
- 血液腫瘍
- 血小板減少症
- 血友病A
- 血友病B
- 月経困難症
- 健忘型軽度認知障害
- 顕微鏡的多発血管炎
- 原発性骨粗鬆症
- 固形がん
- 口腔潰瘍
- 甲状腺分化がん
- 低分化がん
- 高カリウム血症
- 高カルシウム血症
- 高コレステ ロール血症
- 高安動脈炎
- 高眼圧症
- 高血圧症
- 高尿酸血症
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 骨髄異形性症候群
- 慢性骨髄単球性白血病
- 骨髄性白血病
- 骨髄線維症
- 骨粗鬆症
- 催吐性抗悪性腫瘍
- 再生不良性貧血
- 塞栓性脳卒中
- 細菌性結膜炎
- 酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏
- 子宮筋腫
- 子宮頸がん
- 市中肺炎
- 紫斑病
- 脂質異常症
- 脂肪肝炎
- 視神経炎
- 視神経脊髄炎
- 帯状疱疹
- 若年性特発性関節炎
- 周期性発熱症候群
- 重症気管支喘息
- 重症好酸球性喘息
- 小細胞肺がん
- 小児ADHD(注意欠陥・多動性障害)
- 小児高血圧
- 小児心不全
- 小児成長ホルモン分泌不全症
- 小児肺動脈性肺高血圧症
- 掌蹠膿疱症
- 症候性PAD患者
- 症候性硝子体黄斑癒着
- 上肢痙縮
- 食道胃接合部腺がん
- 食道がん
- 食道扁平上皮がん
- 侵襲性感染症
- 心筋梗塞
- 心室性不整脈
- 心房細動
- 新型インフルエンザ
- 進行性核上性麻痺
- 腎炎
- 腎細胞がん
- 腎症
- 腎性貧血
- 腎臓病
- 睡眠障害
- 成人成長ホルモン分泌不全症
- 成人同種造血幹細胞移植
- 成人発症スティル病
- 脊髄小脳変性症
- 脊髄性筋萎縮症
- 脊椎炎
- 脊椎関節炎
- 切迫早産
- 尖圭コンジローマ
- 肛門がん
- 前立腺がん
- 前立腺肥大症
- 全身型若年性特発性関節炎
- 全身性ALアミロイ ドーシス
- 全身性エリテマトーデス
- 全身性強皮症
- 双極性障害
- 早期乳がん患者
- 多巣性運動ニューロパチー
- 多発性硬化症
- 帯状疱疹後神経痛
- 大うつ病性障害
- 大腸がん
- 単純疱疹
- 短腸症候群
- 胆道がん
- 遅発型糖原病II型
- 遅発性ジスキネジア
- 急性呼吸窮迫症候群
- 腸チフス
- 潰瘍性大腸炎
- 爪白癬
- 低ナトリウム血症
- 鉄欠乏性貧血
- 天疱瘡
- 糖尿病性腎症
- 糖尿病性末梢神経障害性疼痛
- 糖尿病網膜症
- 統合失調症
- 頭頸部がん
- 頭頸部扁平上皮がん
- 同種造血細胞移植レシピエント
- 特発性蕁麻疹
- 軟部組織肉腫
- 難治性全身型重症筋無力症
- 肉芽腫症
- 乳がん
- 乳児型糖原病II型
- 尿失禁
- 尿路感染症
- 尿路上皮がん
- 尿路上皮膀胱がん
- 脳塞栓症
- 脳腫瘍
- 排尿筋過活動
- 肺高血圧症
- 肺動脈性肺高血圧症
- 皮膚悪性黒色腫
- 非小細胞肺がん
- 非弁膜症性心房細動
- 鼻茸
- 百日せき
- ジフテリア
- 破傷風
- 急性灰白髄炎
- 細菌性髄膜炎
- 不育症
- 不妊症
- 不眠障害
- 封入体筋炎
- 副甲状腺機能亢進症
- 副鼻腔炎
- 腹腔内感染症
- 変形性関節症
- 片頭痛
- 麻しん
- おたふくかぜ
- 風しん
- 末梢神経障害性疼痛
- 帯状疱 疹後神経痛
- 慢性移植片対宿主病
- 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎
- 慢性肝炎
- 慢性呼吸器病変
- 急性気管支炎
- 慢性腰痛症
- 慢性心不全
- 慢性心房細動
- 慢性閉塞性肺疾患
- 慢性便秘症
- 慢性疼痛
- 慢性蕁麻疹
- 未熟児動脈管開存症
- 免疫不全症候群
- 網膜症
- 夜間頻尿
- 卵管がん
- 卵巣がん
- 緑内障
- 喘息
- 扁平上皮非小細胞肺 がん
- 滲出型加齢黄斑変性
- 膠芽腫
- 膵がん
- 膵臓がん
- 霰粒腫
比較試験の種類
被験者や治験を実施する医師が治療方法を知っていると、被験者の管理、治療、解析、結果の評価にバイアスが生じます。そこで、被験者を、治療を受ける人と観察するだけのグループに分けて比較する場合には、どのように振り分けるかが大切です。そのため、治療内容を医師や患者が知っているかどうかによって次のような比較試験があります。
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1.「無作為化比較試験」(Randomized Controlled Trial)
比較するグループの性質を均等にするため、治療を行うグループと観察のみのグループを無作為に2つに分け比較する試験です。
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2.「二重盲検比較試験」(Double Blind Test)
被験者、治験を実施する医師いずれもが割りつけられた治療内容を知らない形で進められる比較試験です。
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3.「単盲検試験」(Single Blind Test)
被験者側のみ治験薬の中身を知らされないまま治験が行われる試験手法です。医師をはじめとした治験を実施する立場の人間が、被験者に対する治療内容を知ったうえで薬の投与を行うため、無意識もしくは意識的に評価へのバイアスがかかる可能性が高くなります。
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4.「非盲検試験」
被験者、治験を実施する医師いずれもがどう治療が割り付けられているか、内容を知っている形で進められる試験です。